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空力音に関する研究

1.前縁スラットからの渦放出と空力音の発生

スラット後流の絶対不安定性による渦放出の可視化
スラット後流の絶対不安定性による渦放出の可視化

前縁スラットは翼の高揚力装置の一種であり,高迎角時における翼の失速防止を目的として小型レシプロ機から大型ジェット旅客機に至るまで幅広く用いられている.本研究では,単翼の場合の空力音発生において指摘されているフィードバック渦励起機構や後流のもつ絶対不安定性の性質がスラットノイズ発生においてどのように関係しているかを調べている.低レイノルズ数域においては,スラット後縁近傍後流の絶対不安定性と音響フィードバックループによる渦放出現象が同時に存在するが,レイノルズ数を徐々に増加していくと,絶対不安定性がフィードバック音が強くなるにつれて抑制されていく様子が捉えられた.[Makiya, Inasawa & Asai, AIAA J. 48, 2 (2010)502-509]

2.翼の後縁ノイズの発生機構の解明と制御

翼正圧面での不安定性の音響フィードバック励起の可視化
翼正圧面での不安定性の音響フィードバック励起の可視化

翼の後縁から発生する音の生成機構を明らかにするために,NACA0012翼型について,後縁近く境界層に成長する不安定波と渦構造と発生する音の関係を詳細に調べている.特に,空力音の発生と翼の正圧面と負圧面上の境界層遷移との関係に注目し,翼後縁から発生する卓越スペクトル音の発生機構が,レイノルズ数とともに負圧面境界層の不安定性の音響フィードバック励起から正圧面境界層のフィードバック不安定性の励起へと移っていくことが捉えられている.また,この境界層遷移と卓越音の発生との関係は,正圧面境界層を強制的に乱流遷移させることにより明確にされた. [Inasawa, Ninomiya and Asai, AIAA Journal 51, 7 (2013) 1695-1702]